じゃんけんのしくみを数学で考える
三すくみってなに?
「三すくみ(さんすくみ)」という言葉を聞いたことがありますか? 辞書では、「カエルはヘビを怖がり、ヘビはナメクジを嫌い、ナメクジはカエルを避ける」ように、3つの存在が互いに勝ったり負けたりして、誰も優位に立てない関係のことを言います。
これは、まさに「じゃんけん」と同じ構造です。
- グーはチョキに勝ち、
- チョキはパーに勝ち、
- パーはグーに勝つ。
誰かが必ず勝てるわけでも、絶対に負けるわけでもない「公平な関係」ですね。これが、じゃんけんが「運のゲーム」と言われる理由です。
でも実際は、本当にそんなに公平なのでしょうか?
人間は本当に「ランダム」に選べるの?
では、ちょっと実験してみましょう。 「0〜9の数字を適当に30個並べてみてください」と言われたとします。たとえば、
0478365839756638284764282187739
ぱっと見て「ランダム」に見えるかもしれませんが、よく見ると「28」や「38」のような似た並びが何度も登場しています。
実は人間が「適当にやろう」としても、無意識のうちに自分の“くせ”が出ることが多いのです。 これはじゃんけんでも同じです。
じゃんけんに勝てる人、負けやすい人がいる理由
もし、じゃんけんの手を本当にランダムに出しているなら、勝ち・負け・あいこの確率は理論的にはすべて3分の1ずつのはずです。
でも実際には、
- 「なんとなくグーを出しがち」
- 「チョキが多い気がする」
- 「負けたらすぐ手を変えたくなる」
など、人それぞれに行動パターン=くせがあります。
この「くせ」を読めたら? そう、じゃんけんで勝ちやすくなるというわけです。
相手の「くせ」をどうやって分析するの?
では、どうすれば「くせ」を見抜くことができるのでしょうか? たとえば、ある人が「グーの後にパーを出しやすい」という傾向があったとします。これを 確率 で表すとこうなります:
- グーの後にパーを出す確率:70%
- グーの後にチョキを出す確率:20%
- グーの後にもう一度グーを出す確率:10%
このように「前に出した手」によって「次に出す手の傾向が変わる」状態を、数学では マルコフ連鎖(Markov Chain) と呼びます。
たとえばこんな表で表せます:
| 前の手\次の手 | グー | チョキ | パー |
|---|---|---|---|
| グー | 0.1 | 0.2 | 0.7 |
| チョキ | 0.2 | 0.5 | 0.3 |
| パー | 0.1 | 0.5 | 0.4 |
このような表があれば、「前の手」から「次の手」がどうなるかの確率が分かります。 そしてこの情報をもとに、相手が何を出してきそうかを予測できます。
勝ちを「期待値」で考える
じゃんけんに勝つと +1点、負けると −1点、あいこなら 0点 だとします。
さきほどの例で、相手が「グーの後は70%の確率でパーを出す」と分かっていれば、自分はチョキを出すと負けやすい(−1点)、グーだとあいこが多くて(0点)、**パーなら勝ちやすい(+1点)**と考えられます。
これを数式で考えると:
パーを出したときの期待値 = 1×0.7 + 0×0.1 + (−1)×0.2 = 0.5
つまり、パーを出すのが一番「得」だとわかるわけです。
まとめ
- じゃんけんは一見ランダムなゲームに見えますが、人間には「くせ」があるため、完全な運ではありません。
- 「グーの後はパーを出しやすい」といった傾向を確率で表すことで、相手の行動を予測できるようになります。
- これを数学的に扱う考え方が「マルコフ連鎖」です。
- 期待値という考え方を使えば、「どの手を出すのが一番有利か」も計算できます。
このような考え方は、AIや機械学習にも応用されていて、実際にロボットやコンピュータが学習して強くなるしくみの基本になっています。